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フランス醸造地を語る vol.11 アルザス編

  • 2020.04.16

     ドイツ国境沿いに位置するフランス アルザス地方。歴史的にも二度、ドイツ領になった経緯もあり、郷土料理やワインのスタイルにもその影響が感じられる。ボトルの形状もフランスの他の産地のものと比較すると、明らかにドイツワインのボトルの形や色に類似しており、全体として白ワインが中心となっているのも、ドイツと同様である。

     アルザス地方で、キャベツとソーセージを使った「シュークルート」という有名な料理があるが、ドイツでは「ザワークラフト」と呼ばれ、言語は違えど、まさに同じ郷土料理も存在する。

     アルザスでは「リースリング」から造られる白ワインが有名であるが、それ以外にも「ゲヴュルツトラミネル」「ピノ・グリ」「ミュスカ」のクオリティが非常に優れているとされ、これらを合わせて「アルザス 高貴四品種」と呼ぶ。

     現在、「グラン・クリュ」という特級区画のほとんどに、これら四品種が植えられ、素晴らしい白ワインを生み出している。

     白ワインが注目されるアルザスにおいて、赤ワイン用品種として栽培されているものとしては、あのブルゴーニュ地方で有名な「ピノ・ノワール」が存在しているが、ここアルザスでは、白ブドウ品種の影にやや隠れがちな存在となっている。

     アルザスは、フランスのワイン産地の中でも北方に位置し、冷涼気候帯であるが、その地形的な優位性としてよく語られるのが、西側にそびえる「ヴォージュ山脈」の存在だ。

     この大きな山脈が、西から向かって来る雲の動きを遮ることで、この地方の雨量を軽減する。それにより、降雨量の少ない乾燥した空気となることで、ブドウのカビ病を防ぐことができる。つまり病気を防ぐための農薬の使用を抑えることで、有機栽培を可能にしやすくなるのである。アルザス地方にビオロジックやビオディナミの生産者が多く存在するのは、明らかにこの気候条件からくるものと考えられる。となれば、やはりこの山脈の存在は非常に大きい。

     そしてヴォージュ山脈の東側の斜面にブドウ畑が存在することで、しっかりと日照を浴びることができるのと同時に、水はけも良く、風味の凝縮したブドウを育てることができるのだ。

     これが山脈の西側に位置するロレーヌ地方ではそうもいかない。だがアルザスワインのスタイルとは違ったとしても、ロレーヌ地方にもエレガントで軽やかな、美しいワインが存在していることも、私はよく知っている。

     以前勤務していたホテルのレストランで、アルザス地方から著名なワイン生産者とソムリエの方を招いてコラボレーションディナーを開催したことがある。

    その時に改めて思ったのが、アルザスはやはり「白ワインが主役」であるということだ。

    アルザスで有名な食材として、フォワグラや鴨肉があるが、この時のペアリングコースにももちろんそれらがオンメニューされた。

    そして、そのソムリエの方が、それぞれのお料理に合わせてセレクトされたワインは、なんと全て白ワイン。

    メインディッシュの鴨のローストには、ゲヴュルツトラミネルを、リーデルのエクストリーム ピノ・ノワールグラスを選んでサーヴされていた。そしてそれがまた、料理と見事なハーモニーを奏でていたのだ。

    この時以来、「肉料理には赤」というセオリーは、私の中から完全に払拭された。

    記事著者

    • 田邉 公一

      ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」講師。また、都内レストランや企業ドリンクアドバイザー、各種飲料のイベント監修、コメンテーター、執筆、プロモーションなど幅広く活躍。日本酒の難関資格「SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL」の1 人。2007 年ルイーズ ポメリーソムリエコンクール優勝。

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